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膵がん

膵臓とはどんな臓器?

膵臓は、消化を助ける「膵液」を出す働きと、血糖値を調整する「ホルモン」を出す働きの両方を持った、珍しい臓器です。

膵液は1日1.5リットル程度、膵臓の中に張り巡らされている管を通って十二指腸に運ばれ、食事と混ざり、糖・脂肪・タンパク質の消化を助けます。

 

膵癌について

膵癌とは

膵臓にできる悪性腫瘍で、ほとんどは「膵液の通り道(膵管)」にできます。

 

年間罹患者数

膵癌は年間の罹患者数が男女合計で46,000人程度であり、年々増加傾向にあります。

 

 

膵癌による死亡者数

また、膵癌により亡くなられる方も増加傾向となっており、胃癌を抜いて第3位になりました。

 

 

膵癌の危険因子

膵癌の危険因子は様々なものがあり、リスクレベルがそれぞれ異なることもわかってきています。

 

因子 リスクレベル
家族歴 散発性膵癌 第一度近親者の膵癌1人:1.5〜1.7倍
家族性膵癌家系 第一度近親者の膵癌1人:4.5倍、2人:6.4倍、3人:32倍
遺伝性 遺伝性腫瘍症候群 原因遺伝子にもよるが2.3〜140倍
嗜好 喫煙 1.7〜1.8倍
飲酒 1.1〜1.3倍(アルコール摂取24〜50 g/日)
生活習慣病 糖尿病 1.7〜1.9倍(発症1年未満:5.4倍、2年以後:1.5-1.6倍)
肥満 1.3〜1.4倍
膵疾患・膵画像所見 慢性膵炎 13.3〜16.2倍(特に診断2年以内のリスクが高い)
IPMN 分枝型で由来浸潤癌が年率0.2〜3.0 %
膵嚢胞 3.0〜22.5倍
膵管拡張 6.4倍(主膵管径:≧2.5mm)
その他 胆石・胆嚢摘出術 胆石:1.7倍、胆嚢摘出術:1.3倍
血液型 O型以外はO型の1.9倍
感染症 ピロリ菌:1.4倍、B型肝炎:1.6〜5.7倍、C型肝炎:1.5倍

膵癌診療ガイドライン2022年版

 

 

膵癌の症状

膵癌は早期であれば、自覚症状がないことが多いです。

膵癌が早期に発見されるケースとは

膵癌が早期の段階で発見される方の多くは、偶然あるいは定期的に腹部の画像検査(超音波・CT・MRIなど)を受けていた方です。
定期的な健診や他の病気の経過観察中に、たまたま膵臓の異常が見つかるケースが多いです。

また、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる症状)がきっかけで発見されることもあり、この場合は比較的早期の膵癌である可能性もあります。


ある程度進行した膵癌でみられる主な症状

膵癌がある程度進行すると、次のような自覚症状が現れることがあります:

  • みぞおちの痛み・違和感

  • 背中の痛み

  • 腹痛

  • 下痢・軟便(消化吸収の異常)

  • 黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)

これらの症状は、胃や腸の不調と似ているため誤認されやすく、実際に「胃の不調と思って受診し、胃カメラでは異常が見つからず、精密検査で膵癌が判明した」というケースも少なくありません。


糖尿病の急激な悪化にも注意が必要です

膵癌によって膵臓の内分泌機能が低下すると、糖尿病が新たに発症したり、すでに糖尿病を持っている方の病状が急激に悪化することがあります。

そのため、以下のような変化があった場合は、膵臓の精密検査を検討することをおすすめします:

  • 急に血糖コントロールが悪化した

  • これまで安定していた糖尿病が突然悪化した

  • 中高年以降で急に糖尿病と診断された

糖尿病と膵癌との関連については、近年注目されており、膵癌の早期診断のための一つの重要なサインとなり得ます。

 

 

 

膵癌の検査・診断法について

膵癌(膵臓がん)とは、膵臓に発生する悪性腫瘍のことです。

多くの場合、膵液の通り道である「膵管」から発生し、「浸潤型膵管癌」と呼ばれます。その他にも、膵癌にはいくつかのタイプがあり、代表的なものに「粘液性嚢胞腫瘍」「漿液性嚢胞腫瘍」「腺房細胞腫瘍」などの組織型があります。

膵臓がんが進行すると、腫瘍によって膵管がふさがれ、膵液の流れが悪くなります。その結果、膵管が拡張するため、画像検査で膵管の拡張を捉えることが、膵癌を早期に発見する手がかりになります。

現在、膵癌の診断には以下のアルゴリズムが推奨されています。

 

膵癌診療ガイドライン2022年版

 

つまり、血液検査や腹部エコー検査でひっかかる所見があれば、CT・MRIや超音波内視鏡といった精密検査へすすむ、という流れです。

 

 

治療について

膵癌が見つかった場合、まずは手術での切除が可能かどうかを評価し、以下の3つに分類します:

  1. 切除可能(R:Resectable)

  2. 切除可能境界(BR:Borderline Resectable)

  3. 切除不能(UR:Unresectable)

この分類は、主に造影CTなどの画像検査によって行われます。

「切除不能」とされる場合は、以下の2つに分かれます:

  • 局所進行型:遠隔転移はないものの、主要な血管やその周囲に腫瘍が及んでおり、外科的切除が困難な状態。

  • 遠隔転移型:他の臓器への転移が認められる状態。

分類後は、患者さんの体力や全身状態も考慮し、治療方針を相談しながら決定していきます。


各分類ごとの治療方針:

■ 切除可能(R:Resectable)

  • 手術を第一選択とします。

  • 状況によりますが、最近では術前化学療法+手術を行うことが主流です。

  • 術後には補助化学療法(アジュバント療法)を行うことを推奨します。

■ 切除可能境界(BR:Borderline Resectable)

  • 化学療法または化学放射線療法を行い、効果を評価しながら経過をみます。

  • 状況に応じて、手術の可否を再検討します。引き続き化学療法を継続する場合もあります。

■ 切除不能(UR)

  • 局所進行型:化学放射線療法、または全身化学療法を行います。

  • 遠隔転移型全身化学療法が中心となります。

全身化学療法には、複数の治療薬や投与方法があり、患者さんの状態や副作用のリスクを慎重に判断しながら治療法を選択します。

 

 

膵癌とその早期発見について

膵癌は、外科手術(切除)と抗がん剤治療を組み合わせることで、治癒を目指すことが可能な病気です。

しかし、そのためにはできるだけ早期に発見することが重要であり、手術が可能な段階(切除可能例)で見つけることが求められます。


日本には膵癌の標準的ながん検診が存在しません

現在、日本では胃・大腸・肺・子宮・乳腺などに対しては公的ながん検診がありますが、膵癌に対する標準的な検診方法は存在していません

近年、膵癌の罹患者数および死亡者数は増加傾向にありますが、その一因として「簡便で有効な検診方法がない」ことが挙げられています。


腫瘍マーカーによる早期発見の限界

よく「血液検査で早期の膵癌を見つけられないか?」と質問をいただきますが、現時点では困難であるというのが一般的な見解です。

膵癌で以前から使われている腫瘍マーカーには、CA19-9CEAがあります。
進行癌では陽性率が高くなる一方、早期膵癌では検出感度が低いという問題があります。

以下は報告されている早期膵癌における腫瘍マーカーの感度です¹)

  • ステージ0膵癌

    • CA19-9 → 11%

    • CEA → 2.7%

  • ステージⅠA膵癌

    • CA19-9 → 38%

    • CEA → 約10%

このように、従来の腫瘍マーカーのみでは早期膵癌の発見は難しいとされています。

さらに、腫瘍マーカー検査は保険適用外であることが多く、一般内科で日常的に行うことが少ない点も、早期発見の障壁になっています。


新しい腫瘍マーカー「APOA2アイソフォーム検査」

最近になり、膵癌の早期診断に役立つ可能性がある新しい腫瘍マーカーとして、
アポリポ蛋白A2(APOA2)アイソフォーム検査が注目されています。

この検査は、膵臓の機能低下(“膵臓の疲れ”)を反映することで、早期の膵癌を捉えようとするもので、血液検査で簡単に実施可能です。

では、以下のような結果を報告している文献もあります2)

  • CA19-9+APOA2の併用で、ステージⅠ膵癌の陽性率 → 63.2%

  • CA19-9が陰性だった患者のうち、APOA2が陽性だった割合 → 41.7%

つまり、従来のマーカーで見逃される可能性のある膵癌を補完できることが期待されています。


当院での取り組み

当院では、従来の腫瘍マーカー(CA19-9、CEA)に加え、
APOA2アイソフォーム検査も導入しております(※基本的には自費診療となります)。

また、膵癌の早期発見に有効な「超音波内視鏡検査(EUS)」も実施しており、
膵臓がんの早期診断に積極的に取り組んでいます

膵癌がご心配な方や、ご家族に膵疾患のご病歴がある方などは、ぜひ一度ご相談ください。

 

 

 

1) Ikemoto J, et al. Diagnostics (Basel). 2021; 11: 287.

2) Kashiro A, et al. J Gastroenterology 2024

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