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腸炎

腸炎には

  • 細菌、ウイルスや寄生虫などを原因とする感染性腸炎
  • 腸管の血の巡りの不良が原因となる虚血性腸炎
  • 薬剤を原因とする薬剤性腸炎
  • 慢性炎症性疾患である(長い期間で炎症が続く)潰瘍性大腸炎・クローン病・腸管ベーチェット病
  • 放射線照射を原因とする放射線性腸炎
  • もともとの病気が原因となり発症するループス腸炎やIgA血管炎由来の腸炎

など様々な疾患が含まれます。

感染性腸炎

感染性腸炎の原因として、細菌・ウイルス・寄生虫があります。

微生物 摂取原因 潜伏期間 血便 特徴 症状の特徴
腸管出血性大腸菌 肉・野菜 4-8日 高頻度 HUS発症したら危険 腹痛・下痢・発熱
その他病原性 大腸菌 食品・水 12時間-5日 低頻度 HUS発症したら危険 下痢・発熱
コレラ菌 魚介類・水 1-5日 なし 米のとぎ汁様 熱帯・亜熱帯地域 下痢・嘔吐・発熱
赤痢菌 食品・水 1-5日 低頻度 発展途上国への渡航 下痢・高熱
チフス菌 食品・水 10-14日 中頻度 発展途上国への渡航 高熱・下痢
カンピロバクター 加熱足りない鶏肉・肉 2-10日 高頻度 緑色便 ギランバレーに注意 下痢・高熱・腹痛
サルモネラ 鶏卵・肉・ペット 8-48時間 中頻度 緑色便 症状長引く 下痢・高熱・腹痛・嘔吐
エルシニア 豚肉・水・動物 3-7日 低頻度 河川からも感染 腹痛・発熱・下痢
腸炎ビブリオ 魚介類 24時間以内 中頻度 比較的夏に多い 嘔吐・発熱・腹痛・下痢
黄色ブドウ球菌 調理者の手 1-5時間 なし 熱に強い 下痢・腹痛・嘔吐
MRSA 抗菌薬 2-5日 なし クリーム状便 下痢・高熱
赤痢アメーバ 性感染・水 2-3週間 高頻度 粘血便 肝膿瘍 下痢
ランブル鞭毛虫 食品・水 1-4週間 なし 発展途上国への渡航 下痢
クリプトスポリジウム 食品・水 3-10日 なし 動物からも感染 下痢
ノロウイルス 牡蠣・便・吐物 3-40時間 なし 感染力強い 下痢・嘔吐・発熱
ロタウイルス 便 2-3日 なし 白色便 下痢・嘔吐・発熱

原因によっては早期に抗生剤投与が必要な疾患もあり、早く診断することが肝要です。なかには長期の入院治療を必要とする場合や、合併症により致命的になる場合もあることに留意し、診察を行う必要があります。

虚血性腸炎

血流障害を原因とする腸の炎症です。虚血性腸炎というと、一時的な大腸への血の巡りが悪くなり発症する大腸炎のことをいうのが一般的です。

原因

動脈硬化、血圧低下といった血管側が影響となるものと、腸管の圧が上がったりすることによる腸管側が影響となるものがあります。

たとえば糖尿病・高血圧・脂質異常症など、動脈硬化の原因となるお病気をお持ちの方がなりやすかったり、便秘や大腸癌など、腸管の圧が上がるような状態であると発症しやすかったりします。また比較的ご高齢の女性の方に多いとされています。

症状およびCT検査で診断することが多いです。

症状・治療

下血・腹痛・下痢といった症状が突然おこります。虚血の程度により重症度は異なりますが、おおむね2-5日程度で治癒期にはいります。基本的には入院し、腹痛があるうちは絶食を基本として点滴治療をおこないます。

薬剤性腸炎

薬剤の投与により腸管粘膜に炎症性変化を生じ、下痢や下血などの症状があらわれます。抗菌薬、抗がん剤やNSAIDsと呼ばれる鎮痛薬を原因とすることが多いですが、さまざまなお薬で発症することがあります。原因薬剤の中止が最大の治療となります。

慢性炎症性疾患(炎症性腸疾患)

おもに潰瘍性大腸炎とクローン病です。

潰瘍性大腸炎

大腸粘膜に炎症をきたし、びらんや潰瘍を形成する疾患であり、長く付き合っていくことになる病気です。若年成人によくみられますが、小児や中高年でも発症する場合があります。根本的な原因はまだ解明されておりませんが、遺伝的素因と食事や衛生状態などの環境因子を背景に、大腸粘膜で過剰な免疫反応がおこることが病態のメインと考えられています。

診断

臨床症状・内視鏡検査・病理検査によりおこないます。

症状

下痢、血便、腹痛がメインですが、他にも発熱、体重減少、貧血、関節炎、皮膚症状などがみられることがあります。

治療

まず軽症、中等症、重症、劇症例といった重症度判定をおこない、症状の程度やその方の社会背景等を考慮し、治療の導入、継続をおこないます。基本的には内服や注射による治療が中心となりますが、改善がみられず著明に増悪する場合は大腸摘出術が思考される場合があります。

また注意すべき合併症として、癌の合併があります。腸に長く炎症が続くことを原因としておりますが、潰瘍性大腸炎に合併した癌は内視鏡で観察しても早期にみつけることが難しいことが多く、そのため可能な限り年1回の内視鏡検査が推奨されております。ほか、潰瘍性大腸炎の劇症例でみられる中毒性巨大結腸症や、ウイルスや細菌の感染を合併した場合は、緊急性が高いことが多いため、これらに十分注意する必要があります。

クローン病

こちらも持続する炎症が消化管に続く病気ですが、口から肛門まで広範囲の消化管に炎症が生じる病気です。主として若い成人にみられますが、高齢者で発症する場合もあります。根本的な原因はわかっておりませんが、遺伝的素因に加えさまざまな環境因子が重なり、消化管粘膜の免疫系の調整がうまくいかなくなり、自身の消化管を攻撃してしまうことで炎症をおこしてしまうと考えられています。

診断

特徴的な所見・症状と病理検査によって診断いたします。

症状

下痢・腹痛が多く見られ、血便がみられることもあります。また半数以上で肛門病変がみられ、特に瘻孔・膿瘍が特徴的です。そのほか発熱・体重減少などの全身症状や、頻度は比較的少ないですが関節・皮膚・眼などの、消化管ではない臓器に炎症がみられる場合もあります。消化管については、小腸の狭窄や膿瘍形成が問題となることがあり、外科的手術が必要となることも少なくありません。

治療

潰瘍性大腸炎と同様で、まず軽症、中等症、重症といった重症度判定をおこない、炎症をおさえる治療や、局所の症状に対する治療などを組み合わせておこないます。具体的には栄養療法、薬剤の内服・点滴、血球成分吸着療法や手術などが行われます。適切な治療選択により生活の質を維持していくことが非常に重要ですので、専門家による治療が望ましい疾患の一つです。

放射線性腸炎

前立腺癌、卵巣癌や子宮頸癌など、骨盤の内側にある臓器に対する放射線治療は重要な治療方法の一つですが、その放射線治療に伴い発生する腸炎のことを指します。直腸やS状結腸に発生しやすく、症状は下血、下痢、腹痛、便秘などがあります。腸の粘膜の表面の血管拡張が目立つようになり、そこから出血することが多く、下血により発見されることが多いです。

繰り返す下血により輸血が必要になったりするため、生活に支障が生じることが一番の問題とされており、下血を予防するために表面の拡張している血管を内視鏡で焼灼する治療をおこなったりすることもあります。

原疾患より二次的に発症する腸炎

全身性エリテマトーデス(SLE)に合併するループス腸炎や、その他血管炎に合併する腸炎などがあります。免疫免疫抑制療法など原病を含めて治療を行う必要があり、専門医との連携が不可欠です。

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