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下痢

下痢とは

下痢とは一般的に、下記を満たすものと定義されています。

  • 便回数の明らかな増加
  • 便の液状化
  • 1日の便の重量が平均250gを超える

また急性下痢と慢性下痢に分類されます。

  • 急性下痢:急激に発症し、しばしば腹痛を伴い1日4回以上排便がみられる状態
  • 慢性下痢:成人では3週間以上下痢症状が持続している状態

まず、通常の健常者では1日あたり約7 L程度の唾液・胃液・膵液・胆汁などの消化液がつくられており、口から摂取した水分を加えると約9 Lの水分が小腸に流れます。小腸でも消化液が1Lほど分泌されますが、それもあわせて小腸では70〜80 %が吸収され、残りの水分(20〜30 %)は大腸で吸収され、最終的に便としては100 ml程度の水分が排出されます。

下痢になるということは、小腸の分泌液が多くなり大腸に大量の水分が流入したり、小腸・大腸の運動異常や、小腸・大腸の粘膜の障害により水分の吸収がうまくいかないときに下痢をきたすということになります。

原因となる疾患

原因となる疾患は主に下記の通り分類されます。

  • 機能性腸疾患
  • 感染性腸炎
  • 薬剤起因性下痢
  • 炎症性腸疾患
  • 手術後下痢
  • 吸収不良症

機能性腸疾患

機能性ディスペプシアという胃もたれや心窩部の痛みを引き起こす疾患や、過敏性腸症候群、機能性下痢などがありますが、下痢をきたすものは主に過敏性腸症候群です。

過敏性腸症候群

癌や潰瘍などといった目に見える病気によらず、便秘もしくは下痢がおこり腹痛もしくは腹部不快感が持続する状態です。
詳しい原因は明確にはなっておりませんが、腸が脳の機能の影響を受けやすいことから、ストレスなどの心理的要因や睡眠不足などの生活習慣の乱れが原因になると考えられています。またほかに感染性腸炎に罹患した後に発症したり、遺伝的素因(家族歴があるかどうか)なども関与するといわれています。
日本において、過敏性腸症候群の方は人口の10〜14%といわれています。20代〜40代に多く、年齢を重ねるにつれて減少していきます。
過敏性腸症候群の診断は、国際的な診断基準であるRomeⅣ基準を用います。

RomeⅣ基準

反復する腹痛が最近3ヶ月の間、平均して少なくとも週一回あり、
下記の2項目以上の基準を満たす

  1. 排便と症状が関連する
  2. 排便頻度の変化を伴う
  3. 便形状(外観)の変化を伴う

6か月以上前から症状があり、最近3か月間は上記の基準を満たすこと

治療の基本は、生活習慣の改善になります。たとえば過敏性腸症候群の増悪因子と考えられる生活習慣であります、偏食、夜食、食べ過ぎ、睡眠不足や心理社会的ストレスといった因子を可能な限り避けるよう相談いたします。食事の内容に関しては、低残渣をなるべく控え(低残渣食は消化管運動の亢進を促すため過敏性腸症候群においては控えたほうがいいとされています)、高繊維食をおすすめしたりします。また、香辛料、アルコールも控えることもおすすめします。
このような生活習慣の調整をおこない、それでも改善が乏しい場合は薬剤の調整をおこなってまいります。

過敏性腸症候群は小児期からはじまり、学校、仕事やプライベートに支障が生じ、長い時間お悩みになる方がほとんどです。不安障害・うつ病との併存率も高く、重症化する前に消化器内科・心療内科を受診され、適切な治療を行うことをおすすめします。

感染性腸炎

こちらをご覧ください

薬剤起因性下痢

胃酸を分泌するお薬や、特定の消炎鎮痛薬の投与で引き起こされることがあります。また、ペニシリン系やセフェム系などの抗菌薬により下痢をきたすこともあります。これらは薬剤の中止により改善することがほとんどで、重症化することはあまりありません。

炎症性腸疾患

潰瘍性大腸炎、クローン病は下痢の原因になります。

こちらをご覧ください

手術後下痢

大腸の切除をおこなった場合は、水分を吸収する機能が低下し便に含まれる水分量が増加するため、下痢をきたすことがあります。また小腸を切除した場合は水分の吸収が低下するのもありますが、消化不良となったり脂肪の吸収が低下することもあり、下痢をきたしやすくなります。
また胃の切除をおこなった場合、胃酸分泌低下による腸内環境の変化や、食べ物が急速に小腸に流れることによる腸の運動の活性化などを原因とし、下痢になってしまうことがあります。
胆嚢摘出術により胆汁の小腸への流出状況の変化や、膵臓の切除術をおこなったあとの膵液の分泌量低下などにより、特に食後に下痢をきたしやすくなることもあります。

吸収不良症

消化・吸収の機能が低下することにより、食べ物の中に含まれる栄養素が主に小腸で十分に吸収できない状態のことをいいます。
原因は小腸関連と小腸以外に分けられます。

小腸関連

クローン病、癌・リンパ腫などの腫瘍、小腸炎、セリアック病(グルテン不耐症)、アミロイドーシス(アミロイド蛋白という繊維性蛋白が全身の臓器に沈着する病気)、結節性多発動脈炎(腸を栄養する血管などに炎症をきたし小腸炎に至る)、放射線性小腸炎などがあります。

小腸以外

手術後(胃、胆嚢、膵臓、小腸など)、慢性膵炎(膵液の分泌低下)、閉塞性黄疸(胆汁の流出障害)などがあります。

 

下痢の原因は多岐にわたり、鑑別に難渋する場合があります。症状が長期になる場合は重篤な状態になる場合もあるため、十分な原因検索と治療をおすすめします。

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